日記

きたなくて美しいもの

音楽制作の現場では、
音をわざわざローファイにすることがあります。
ローファイというのはハイファイ(高音質)の逆で、
簡単に言ってしまえば、歪んでいたり、
ノイズが乗ったりした低音質のことです。

音楽を作る時に、昨今のデジタル技術の進化によって、
高音質で音を取り入れることができるようになりました。
しかし、高音質の素材(楽器の音など)を楽曲に重ねてみると
どうも「しっくりこない」ということが多いものです。
そういう時には、その音をわざと歪ませたり、意図的に
ノイズを乗せたりすると「しっくりくる」ようになります。
エレキギターのノイジーな歪みバリバリの音も
このような表現の延長線上にあると言って良いでしょう。

映像に効果音を付ける音響効果の現場でも、
たとえば、足音とかテーブルにコップを置く音などという
いわゆる効果音素材をそのまま映像にくっつけたのでは、
それこそ「取って付けたような」何とも味気ないものに
なってしまいます。
そこで、その効果音素材に室内空気音のノイズを重ねたり、
高音域をカットしてくすませたりしてローファイ化を試みます。
すると不思議なことに映像にマッチするのですね。

これは何も音楽に限ったことではなく、写真などでも最近は、
撮影した写真をわざとセピア色にしてみたり、
くすみや粗さ、果ては汚れまでも加えたりして楽しむという
iPhoneのアプリなどが流行していて、
ああ、人はきれいなものよりも、少しくたびれた感じの
「きたなくて美しいもの」に惹かれるんだな、と
つくづく感じております。

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。