日記

クラウドレコーディング

以前は、譜面を書いて演奏家に演奏してもらい、
それを録音することが当たり前だった音楽制作の現場ですが、
今では、プログラミングによる音楽制作の割合が多くなり、
市販されている音楽のほとんどが、DAW(デジタル・オーディオ・
ワークステーションの略。コンピューターで音楽を作るソフトや
機材のこと。)で作られています。
コンピューター技術の発展と共に、
演奏家もずいぶんお仕事を失いました。

作曲家にとっては譜面を書いて演奏家に渡し、
演奏してもらった音を収録するほうが作業負担は少ないですし、
人間的なニュアンスも簡単に出せますので楽なのですが、
この方法にはお金と時間がかかります。

演奏家へのギャランティーだけではなく、
レコーディングスタジオ代(これがとても高い。)、
エンジニアさんの報酬などお金がたくさんかかりますし、
生録音ですので、関係者全員のスケジュールを調整して
レコーディングの日時を決め、ひとつの場所に集まっていただき
一定時間拘束して行わなくてはなりません。
良いものができることはできるのですが、
今の時代には合わない仕事のやり方なのかもしれませんね。

プログラミングによる音楽制作は、作曲、編曲、演奏、録音、
ミックス、マスタリングをすべて一人ですることができます。
(独りよがりな作品に陥りがちですが。)
また、たとえば、修正の必要が生じた際に、プログラミング制作
ですと、ほんの数分あれば直して納品することができます。
ボーカリストのキーに合わせた移調なども一瞬でできます。
同じことを生演奏録音でやろうとすると、まず楽譜を書き直し、
演奏家の人に再度集まってもらわなければいけなくなります。
もちろんスタジオ代とエンジニア代も追加発生してしまいます。
プログラミングによる音楽制作は、
そのあたりのコスト圧縮に多大な貢献をしています。
音楽業界にとっては厳しい時期ですので制作予算も少なく、
こういった手法での音楽制作は自然の流れですね。

しかし、音楽は人が演奏したほうが良いに決まっています。
そこでこれからは、DAWとクラウド、ネットコミュニケーション
を活用した音楽作りがもっと進んでくると思います。

まず、作曲家が書いた楽譜をPDFでクラウド上に置き、
演奏家はパソコンやタブレット端末で
そこにアクセスして楽譜を見て練習します。
楽譜に修正があった場合には、作曲家はクラウド上の
データひとつを直せば良く、あとは演奏家に

「楽譜を修正したので確認しておいてください。」

とメールするだけです。
これまでのように、楽譜をプリントアウトし直して、
全員に送ったりFAXしたりする必要はありません。

そしてレコーディングは演奏家それぞれの自宅で行います。
演奏家それぞれのお家には録音システムが完備され
(と言っても、ノートパソコン1台とマイクひとつ。)
演奏を録音し、サーバーにアップロードします。
高音質で録音した容量の大きなデータも、
数秒で送れるくらいにネットインフラは整っています。

日本にいるディレクターの指示のもと、フランス在住の
ピアニストの演奏、アメリカ在住のギタリストの演奏など
世界中に散らばる演奏家たちの録音データが、
ネット上のひとつの場所に集められ、
それをエンジニアがミックスをして音楽が完成します。

また、音楽は

「みんなで一緒に。」

が最も良いものが生まれやすいので、

「日本時間〇月〇日○時にセッションします。」

というように事前にメールをしておいて、
その時間になったらそれぞれが自宅の録音ブースに入り、
ネット回線を使って、ビデオチャット機能などで
楽しくコミュニケーションを取りながら
リアルタイムレコーディングをするなどということも
これからどんどん盛んになってくると思います。

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。