日記

ヒトになった瞬間

ヒトはサルから進化してきたと言われていますが、
いったいどの瞬間にヒトになったのでしょうか。

ある日突然魔法にかけられたように変身したのではなく、
気の遠くなるような長い年月をかけて、
「変化」とは感じられないくらいのゆっくりさで
変わってきたのでしょうね。

二足歩行や石器の使用などもヒトとしての特徴だとは思いますが
もっとも重要なのは「埋葬」だと思います。

動物は、仲間が死んでも、束の間の興味を示すだけで、
その亡骸を埋葬しようとはしません。

ところが人間は、身近な人の死を悼み、亡骸を丁寧に埋葬し、
その人のために祈ります。
長い間悲しみ続けることもあります。

これは、動物と人間の明らかな差であると言ってよいでしょう。

歴史上、初めての死者の処理跡が、
スペインのアタプエルカというところで発見されました。
30人あまりの人骨が洞窟内で見つかったのです。
亡骸をひとつ所に集めていますので、
そこには明確な意思があったと思われます。

そしてついに、ネアンデルタール人が、
意図的に死者を埋葬し始めます。

ネアンデルタール人は、遺体を屈葬の形で埋葬しました。
その亡骸の化石があったそばに、ノコギリソウや
ヤグルマギクなど数種類の花粉が大量に発見されたのです。

「ネアンデルタール人には死者を悼む心があり、
 副葬品として花を遺体に添えて埋葬する習慣があった。」

と研究者たちは考えました。

僕はこのエピソードを聞くと、
いつも胸がいっぱいになって涙が溢れそうになります。

大切な人を失って、その深い悲しみの中で、
亡骸にそっと花を手向けたネアンデルタール人の姿が思い浮かび

「他者を想った瞬間に、サルはヒトになったんだ。」

と思います。

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。