日記

フィルムによる映画の快感

映画といいますと、フィルムに焼き付けられた絵が、
カタカタ音を立てながら連続映写される光景を
思い描く人が多いと思いますが、
現在ではそのような場面はほとんど消滅してしまいました。

映画撮影用のフィルムを作っていた会社が次々と倒産・撤退し、
また、たとえフィルムで映画を作ったとしても、
映画館のほとんどはそれを上映する機材を取り払ってしまい、
上映することができない状態になっています。

今は1本の高画質映画が外付けHDDやUSBメモリで持ち運びされ、
さらにはそれすらも無駄だと考える人たちによって、
インターネット回線を使って、配給元から映画館へ、
直接「データ送信」によって配給されるまでになっています。

デジタルは高画質できれいですが、
フィルムにはデジタルにはない味わいがあります。

フィルムで映画を作ったり観たりすることは、
CDで音楽を聴かずにアナログレコードで楽しむような、
一部の愛好家の行為へと変り果ててしまいました。

とは言っても、アナログレコードの機械は個人で持つことが
できますが、フィルムの映画を個人宅で観るのは困難ですね。
愛好家が集うフィルム上映専門の映画館などが
できるかもしれません。

「デジタルでもアナログでも観客はまったく分からないよ、
違いを教えてよ。」と言われますが、たとえば、
iPhoneのアプリで爆発的なヒットとなった
「instagram」というアプリケーションがあります。
あれは、高画質なデジタルカメラで撮った写真を
わざわざ色褪せさせたり、ヨゴレやボカシ、クスミなどを
付け加えて楽しむためのソフトです。

Twitterなどを見ますと、そこに掲載された写真の多くは、
このソフトを使ってわざわざ「汚れさせた」写真であることに
気付くことでしょう。

高画質の写真をどうしてわざわざ汚すのだろう、
と思われるかもしれませんが、
そのほうが人の心には心地良いのでしょうね。

アンティークの雰囲気を真似て、
新品なのに錆びたデザインの金物雑貨があったり、
真っ白なレースを紅茶にひたして古い感じを出すなど、
人間は「汚くて美しいもの」に惹かれるのです。

そのような価値がフィルムの映画にはたっぷり含まれていて、
デジタル高画質の映画には含まれていない、
とお考えいただけると良いでしょう。

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。