日記

作品との出逢い

この世の中にはまだ自分の知らない本や音楽、映画が
それこそ無数に存在しているはずで、
世界中すべての作品を一生のうちに味わおうとしても
それは無理な話ということになります。

僕は仕事柄、新作や話題作は必ず読んだり観たり聴いたり
していますが、自分が生まれるよりもずっと以前に作られた
作品で今まで知らなかったものに出逢うと、

「どうして今まで知らなかったのだろう。
 やっと会えたね。」

などと、ある小説家が女優さんにプロポーズした時の言葉と
まったく同じことを言いたい気持ちになります。

新作はそれが完成してからでなければ出逢うことはできませんが
古い作品というのは、自分がこれまで生きている時間と同時に
ずっと存在していたことになりますので、
そんな気持ちになるのかもしれません。

こうしてみますと、作品が時空を越えたものになるためには、

「人間の営みや感情、つまり人間そのものが
 しっかり表現できているかどうか」

にかかっていると思い知らされます。

巨費を投じて最先端のCGを駆使して制作されても、
そこに人間が描かれていなければ、
いつしか時間と共に忘れ去られてしまうでしょう。

幼い頃、特撮が多用されたハリウッドの新作映画を
夢中で観ていた僕に、お母さんが、

「むかしの映画、モノクロの映画も良いものよ。
 台詞のひとつひとつが心に残るの。」

と言いました。

今にして思えばその言葉は、
映画の本質を教えてくれていたのです。

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。