作曲には三つのやり方があります。
まず一つ目は、自らの心と対話し、
己の心から湧き上がってくる音を一つずつ拾って
音楽を組み立てていくやり方です。
これは、純粋に作曲家自身の創作欲によるものであり、
自己の探求と新しいものへの挑戦となります。
二つ目は、他者のイマジネーションと作曲家の音楽性を
混じり合わせながら、音楽を作っていくやり方です。
これは、他者との合作と言ってもいいほどなのですが、
他者は特に音楽に精通している人でなくても良いのです。
他者の漠然としたイマジネーションをしっかり理解しながら
音楽を組み立てていく技術が作曲家にとっては必要になります。
依頼されて作る音楽のほとんどはこの作り方によるものです。
たとえクライアントが「好きに作っていいよ。」と
言ってくれた場合であっても、作曲家は自然と
クライアントの好みや要望を意識しながら創作します。
そして三つ目ですが、僕はこのやり方で作曲することが
世の中ではあまり行われていませんが
実はとても素敵だと考えています。
それは、作曲家が己の心を無にし、
他者の心の中で流れている旋律にのみ耳をすませ、
その音を一つ一つ丁寧に取り出しながら
音楽を作っていくというものです。
これは一見すると二つ目のやり方に似ていますが、
大きく異なる点は、作曲家本人が生み出そうとするのではなく、
あくまで他者が生み出すのを「お手伝いする」ことに
力を尽くすというところにあります。
自己の内面に向き合って仕事をすることの多い作曲家にとって、
他者の心の中の旋律を感じ取りそれをかたちにしていく作業は、
なんと魅力的なことでしょう。
日記