日記

妄想中毒者

むかしNHKの番組でアニメ映画監督の宮崎駿さんに一般人が
質問をぶつけるコーナーがありまして、そこである人が

「私は、絵は描けないけれど、想像力はあります。
 王国のイメージやそこに住んでいる住人、そこで展開する物語
 などのアイディアは持っています。だけど絵は描けません。
 こんな私が創作家になることはできないものでしょうか。」

というようなことを質問していました。

アイディアを持っている人というのは実はたくさんいます。
アイディアを思いついたり、それを書き留めておく作業は
快楽の一種であり、とても楽しい時間であるからです。

しかし、それを実際に自分の手を使って形にできなければ、
創作家として活動していくことはできないでしょう。
上記の人の場合ですと、自分で絵を描く訓練をするか、
もしくは、絵を描いてくれる人を巻き込んでプロジェクトを
立ち上げるかのどちらかになります。(後者はプロデューサー
という職種になります。人を引き付けるスキルが必要です。)

アイディアは思いついた人のものではなく、
それを自分の手で形にした人のものです。

作曲家のストラヴィンスキーも、ハーバード大学で行った講演の
中で次のようなことを語っています。

「作品を創作するというのは、頭で考えるだけではなく、
 実際に手をくだして材料をととのえ、それを紙の上に書く喜び
 と固く結びついております。作曲家は芸術家である前に、
 自分の手仕事で作業を積み上げていく職人なのです。」

アイディアというものは誰でも簡単に思いつきます。
素晴らしいアイディアを思いついた瞬間などは、
「自分って天才!」などと自惚れて高揚してしまうものです。
しかし悲しいかな、そういう人はたくさんいます。
本当の天才は、そのアイディアを、
限られた時間の中で形にできる人です。
そのためには強靭な忍耐力が必要となりますので、
多くの人は挫折してしまいます。
そしてまた妄想の快楽に浸ってばかりの妄想中毒者となります。

自分の手を使ってひとつひとつの作業を積んでいくという
苦しい時間を耐えなければ創作家にはなれませんし、
何より現実の世界にないものを創出することは
苦痛なしにはできません。

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。