日記

心という名の魔物

仕事でも人とのお付き合いでも何にでも言えることですが、
この世の営みのすべてには「山と谷」があります。

「人間万事塞翁が馬」

という言葉がありますね。

昔、中国に、塞翁と呼ばれている占い師の老人がいました。
彼の馬が逃げ、人々が気の毒がって言葉をかけると塞翁は、

「大丈夫。そのうち良いことがあるさ。」

と言って笑ったそうです。

すると不思議なことに、やがてその馬が他の馬を連れて
戻ってきました。

それを見た人々が良かったねと言ったら塞翁は、

「これは不幸のはじまりだろう。」

と言いました。

すると、この馬に乗った塞翁の息子が、
落馬して足の骨を折ってしまいました。

人々がお見舞いをすると塞翁はまた、

「今回の不運がまた幸運を運んできてくれるだろう。」

と言いました。

その一年後、国は戦争となって若者たちの多くは戦死しました。
しかし足を骨折していた塞翁の息子は兵役を免れたため、
戦死しなくて済みました。

以上のような物語なのですが、幸運が不運へとつながり、
不運が幸運へとつながっていくことを物語っています。

同じように、

「禍福は糾える縄の如し」

とか、

「沈む瀬あれば浮かぶ瀬あり」

などという言葉もありますね。

注目したいのは、同じようなことを伝えようとする昔からの
言葉が、こんなにもたくさん存在しているということです。
つまり、この世の真実と言っても良いでしょう。

山と谷が延々と続くような曲線を思い描きながら、
自分は今そのどこにいるだろうかといつも考えます。

そして、この曲線を形成しているのは、
自分自身の中にある「心という名の魔物」であることに
ハっとすることがあります。

人生が上々で良いことばかり起きている時には、
気持ちが高揚し、奢り、身勝手になり、欲望が膨れ上がり、
そのような心の状態で行動をしますから、
当然のことながら良くない結果を招くことになり、
一転して谷へと向かっていくことになります。

逆に、人生が谷底を彷徨っているように思う時には、
気持ちが落ち込み、自信が無くなり、恐怖を感じ、
動けなくなってしまいます。
当然のことながら行動に慎重さ、丁寧さが現れますので、
一転して山へと向かっていくことになります。

この山と谷の曲線の振れ幅を小さくし、
美しく調和したバランスのよい曲線を描くためには、
今が人生の山だと認識したら、谷にいる時と同じ心理状態、
すなわち、「気持ちが落ち込み、自信が無くなり、恐怖を感じ、
動けなくなってしまう」というニュアンスを心にセットし、
今が人生の谷だと認識したら、山にいる時と同じ心理状態、
すなわち、「気持ちが高揚し、奢り、身勝手になり、
欲望が膨れ上がり」といったニュアンスを心にセットできれば、
心の力関係が相殺されて、一定を保つことができますね。

心という名の魔物を、手綱さばきによって、
自由自在に操ることができるようになるわけです。

なかなかできることではありませんが。

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。