日記

愛ある悪意

「人は、その人以上にも、その人以下にもなることができない」

と言われます。

たとえば、スキャンダルを起こしてしまった役者さんが、
次の出演作品で、清廉潔白な役柄を演じることは極めて
難しいでしょう。

染み付いてしまったイメージが作品に大きく作用し、
観客の目がそちらに向いてしまって、お芝居どころでは
なくなってしまうからです。

むしろ、悪漢や悪女の役なら、場合によっては、
とてもマッチするかもしれません。

「プライベートと役柄は別だ」

とも言われますが、多くの観客はそうは思いません。

言い換えると、役者という職業は、プライベートそのものも、
一種「役柄」の傾向を持つものであると言えるでしょう。

ダーレン・アロノフスキー監督の『レスラー』という映画が
僕は大好きなのですが、この作品の主人公をミッキー・ローク
が演じました。

この映画の役柄とミッキー・ロークのプライベートが
イメージ的に重なるところがあって、それがこの映画の魅力
のひとつになっています。

監督など制作サイドの「愛ある悪意」を感じます。

人間ですから、みんな弱いところ、醜いところ、汚いところが
あります。

長い人生の中で数々の悪行が行われ、束の間喜んだり、
その後には後悔したり、自分を責めたりするでしょう。

発作的、病的に、人を害する可能性のある人は、まったく別の
対処をしなければいけませんが、そうではないそれ以外の
すべての人も、みんな悪いことをするものです。

そんな時、周囲の「愛ある悪意」によって救われるのは、
とても幸運なことだと言えるでしょう。

今日の音楽

煩悩/作曲:山谷 知明

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。