日記

楽器や旋法に頼らずに表現する

ある国や地域の雰囲気を音楽に取り込もうと考えた時に、
その国や地域特有の楽器を使用することは、
もっとも手っ取り早い方法です。

たとえば、フランスならアコーディオン、尺八や琴は日本、
バグパイプはスコットランド、沖縄なら三線などというように。
(余談ですが、サックスの音が鳴ると、特に映像作品においては
突然エロティックな雰囲気に包まれるのも不思議なことです。)

しかしそれはあまりにも安易な方法ですので、
表現者としてもう少しだけ凝ってみようとしますと、
次にはその国や地域独特の旋法を使うという方法があります。

旋法というのは「独特な音階」というようなもので、
たとえば、「ドレミファソラシド」の「ファ」と「シ」を抜いて
「ドレミソラド」という音だけを使ってメロディーを作ると、
アイリッシュの雰囲気を出すことができます。
(スコットランドの民謡でもある『蛍の光』などは
この音階を使って作られていますね。)

たとえば、「ドレミファソラシド」の「レ」と「ラ」を抜き
「ドミファソシド」という音だけを使ってメロディーを作ると、
沖縄の雰囲気がたちまち頭の中に浮かびますし、
「ラシ♭レミソラ」と鳴らすと、Japanな雰囲気が出現します。

しかしこの方法も、楽器を使用する方法に続いて
かなり安易な方法だと言えるでしょう。

もっとも難しいのは、たとえば、
西洋の音楽理論の上に日本独特のイメージを創造したり、
ピアノを使ってアフリカの土着的な雰囲気を表現する
などといった場合です。

これはもう、楽器や旋律に依存することは一切できず、
「目には見えない感覚的なもの」を、
与えられた手段のみを使って伝えなければいけないという、
もっとも困難な方法となります。

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。