日記

神様のしわざ

「ピンチをチャンスに変える」

というのは、創作の世界でもよくあることで、
たとえばスピルバーグの映画『ジョーズ』の中で、
上のほうで泳いでいる女性を
海底から見上げるような何気ないショットがあります。
女性の足に向かって、海の底から次第にズームアップしていく
ただそれだけのシーンなのですが、このシーンのおかげで
観客の興味と恐怖感を引き立たせることに成功しています。
しかし、このシーンは当初から計画にあったわけではなく、
大金をかけて作ったサメのロボットがトラブルで全く動かず、
苦肉の策として撮影されたものだったそうです。
もしもサメロボがスムーズに動いていたら、
この『ジョーズ』の成功は無かったかもしれませんね。

同じように、アメリカの人気テレビシリーズ『ツインピークス』
のワンシーンで、若者たちがホースで水を掛け合っている情景が
あるのですが、これは映画のストーリーとは特に何の関係もなく
水を掛け合っている若者たちも単なる脇役です。
別な日に撮ったその場面では晴れて地面が乾いているのに、
それにつながるカットを撮る日には運悪く雨が降っていて、
地面が濡れていたために、苦肉の策として
監督のデヴィッド・リンチが即席で考案したものだそうです。
作品に不思議なムードを添える演出となっており、
多くの関係者が頭を抱えるような事態を、素晴らしい機転で
作品に演出として活用してしまうなんてさすがですね。

こうして様々なエピソードを見聞きしますと、
心に残るシーンや演出、独特な音楽の構成やメロディーなどは、
実は当初から計画されていたものではなく、
不意のトラブルを回避しようと知恵を絞った結果として生まれた
ものが多いということに気が付きます。

僕たちの創作やレコーディングの現場では、
思いもかけないアイディアが閃いたり、
普段はなかなか出ないような演奏がその時にだけ出たりすると、

「あ、神が舞い降りた。」

と冗談のように言って笑ったりするのですが、
本当に人間の意思ではどうにもならないことですので、
神様のしわざに違いないと思ってしまいます。

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。
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