日記

美でおなかは満たされない

景気の良くない時にまず真っ先にカットされるのが、
音楽や美術、映画などといった「美」をテーマにしたものです。

人間、生きていくためにはまずは「衣・食・住」が最優先であり
美しい旋律だのきれいな絵だのそういうものは二の次です。

リーマンショック後の映画製作の現場では、
資金が全く集まらなくなり、消えてしまったプロジェクトや
プロダクションが数多くありましたし、
家計においてもピアノのおけいこや美術館めぐりなどは、
とりあえず後回しにされるという寂しい状況になりました。

映画『男はつらいよ』の中でも、浅丘ルリ子さん扮する
流浪歌手のリリーが、寂しげに海を眺めながら、

「わたしたちってのはさ、いらないと言われれば、
 本当にいらないものね。」

などという苦しい台詞を言っています。

しかし、人間が最後の最後にすがるもの、
それが「美」である、と僕は思って(信じて)います。

映画『虹をかける男』では、主人公の映画興行師が、

「映画でお腹をいっぱいにすることはできないけれどな、
 心をいっぱいにすることはできるんだよ。」

と強がって主張しますし、作家の寺山修司さんは

「人間が最後に罹るのは希望という名の病である。」

と書いています。(この場合の「希望」というのは「美」と
置き換えることができるでしょう。)

また、ジャン・コクトーは、

「美はそれを認めない人の心までも動かしてしまう。」

と書いています。

美が、衣・食・住とは関係のないところで人の心に作用し、
人が力強く、豊かに生きていくための大きな力となっていると
思いたい(信じたい)ものです。

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。