日記

脚を使って作曲する

歌のレコーディングの時に、ボーカリストさんに、

「歌う時に意識をするのは身体のどの部分ですか?」

と尋ねてみましたら、

「脚です。」

という意外な答えが返ってきて驚いたことがあります。
喉かお腹がもっとも意識する部分だろうと思っていたからです。

喉やお腹というのは樹の幹の部分のようなものであり、
歌い手がもっとも意識しなければいけないのは、
地面にしっかりと立ち、脚と腰で自らを安定させることであり、
それは木々が大地に堂々と立つのと同じくらい大切なのです、
ということでした。

そのお話を聴いて、僕にも思い当たることがありました。

僕は音楽をこしらえる仕事をしていますが、
仕事でやっていますと、締め切りが必ずあります。
締め切りが刻一刻と迫っているのに、
思い通りに音楽が作れないような時に、
僕は無意識に部屋の中をグルグルと歩き回ったり、
思い切って散歩に出て早歩きで歩いたりします。
そうすることによって不思議なことに
その悶々とした闇に突破口が現れるのです。

椅子に座って机に向かっていただけでは解決できなかったことが
足腰を使うことによって乗り越えることができます。

「メロディーは、脚が運んでくる。」

とでも言いたいようなことがいつもあります。

「作曲する時には頭を使いますか?」

と質問されたとしたら、僕も

「いいえ、使うのは、脚です。」

と答えるかもしれません。

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。