日記

腕時計をしない人

ある社長に

「山谷君、ビジネスで大事なのはスーツと靴と腕時計だよ。」

と言われ、なるほど身なりをあまり気にしない僕は、
それだからキミはダメなのだと言われているようで、
ひどく落胆したものです。

確かに、その社長をよく観察してみると、
きめの細かい滑らかな布地のスーツに、ピカピカ光る皮靴、
かなりのお値段だろうと思われる豪華なシルバーの腕時計が
見事にキマっています。

特に腕時計の存在感は相当なもので、
スーツの袖口からチラと見えた瞬間には、

「この人は仕事ができるに違いない。」

という何の根拠もない魔法にかけられてしまいます。

それならば僕もと思ったのですが、
実は僕はむかしから腕時計が大の苦手だったのです。

何だか手首の脈のあたりを締め付けられるような気がして、
血が止せき止められるようで胸が苦しくなってしまいます。

また、ひどい暑がりの僕ですので、夏には

「腕時計のせいで暑い。」

と感じ、それを「脱ぎたく」なってしまいます。

とある人に、

「腕時計をしない人は、自由を追い求めてばかりいるので、
 女の人の束縛を嫌うのよ。だから恋愛には向かないの。」

などと叱られたこともあり、
腕時計をしない人はビジネスも恋愛もダメなのだなと、
落ち込むばかりなのでした。

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。