日記

芸術の共有について

僕は古本屋で買った古本に、赤鉛筆で引かれた線を発見したり、
ページの端が折ってあったりするのを見つけると、
とてもうれしくなります。
それは、その本の前の持ち主が、
何らかの心の動きによって付けた「しるし」であり、
それを発見することで、その作品をその人と共有しているような
不思議な安らぎを味わうことができるからです。
芸術は一人で独占して楽しむよりも、
みんなで味わったほうが楽しいものです。
たとえば大好きな人が亡くなってしまったとして、
その人の本棚から本を一冊取り出して開いた時、
赤鉛筆で文章に線が引いてあったら、
「ああ、あの人はこの文章が好きだったんだな。」
と、涙が溢れるようなあったかい気持ちに包まれることでしょう。
これは実は「映画館で映画を観る幸福感」にも言えることです。
いくら豪華なホームシアターを買っても、
一人ぼっちで観ていたのでは、本当の満足には至れません。
映画館並みの設備を自宅に設置できる世の中になったのに、
映画館で映画を観るほうが好きだという人が減らないのは、
どんなに豪華なホームシアターよりも、
「芸術の共有感」のほうが心地良いからなのです。
映画館で、同じシーンを観て、
たくさんの他人が同時に泣き笑いできるのは、
まさに奇跡のような瞬間ですね。
「他人と感情を共有できる」
これこそが僕たちが「寂しく生きない」ための方法であり、
もっとも純粋で贅沢な芸術の味わい方なのです。

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。