世の中を便利にしたり、人の心を感動させるのは、
いつも「ほんのちょっとしたこと」ですね。
たとえば、僕は音楽を作っていますが、
苦心して作り上げてきた部分ではなく、最後に味付けとして
ものの30秒くらいの時間でパパっとつけた簡単な1フレーズを
お客さんが大変気に入って、褒めていただくことがあります。
以前、映画用のチラシを作った際にも、
原作者の名前にふりがなを付けたら、主催者の人に、
「このふりがなが良かったね。たったこれだけのことだけど、
配布したたくさんの人がよく指摘してくれるよ。」
と、単なるふりがなを付けるか付けないかということだけで、
会話や評価が生まれるというのはおもしろいことです。
もちろんそんな「ちょっとしたスパイスのようなこと」は、
土台となる大枠がしっかりしてこそ威力を発揮するのですが、
しっかりした土台を作れば作るほど、その「ステージ」は
目立たなくなって、その上に置くものが人の関心を惹きつける
のかもしれません。
ドストエフスキーの小説の中にも、
「小さなこと! 小さなことがもっとも大切なのだ!
その小さなことがいつもすべてをだめにしてしまうのだ。」
という言葉がありますし、ある映画監督は、
「私はこのたったひとことのセリフを伝えたいために、
途方もない労力と時間をかけて映画を作ったのです。」
と言っています。
受け取る人がまったく意識しない安定した土台と、
心に深く刻まれるような印象的なスパイスをひとつまみ、
そのふたつの調和が肝心ですね。