人はどんなに背伸びをしても、
自分以外の人になることはできませんね。
よく、
「あなたの気持ち、分かる。」
と簡単に言う人がいますが、そのようなことは不可能なのです。
他人の気持ちを完全に知ることはできません。
だからと言って、人の気持ちを分かろうとすることは無意味
なのかというと決してそうではなく、
「理解することはできないかもしれないけれど、
それでもあなたのことが知りたい。
あなたの気持ちを自分のことのように受け止めたい。」
と願い続けることはとても意味のあることだと思いますし、
それが時に、優しさとか思いやりという言葉で表現されます。
映画や音楽など、何か作品を創ろうとする人の
創作の根源にはこのようなことがなくてはいけません。
つまり、映画の中に出てくる主人公は、
創作者自身とは別の人生を生きている、別の人間であり、
その人物のことを深く理解しなければ、
主人公は生き生きとしてこないのですが、
先に述べたように、完全に理解することも不可能です。
創作者にできるのは、自分の人生で起こったこと、
自分が過去に感じた感情と、主人公の身に起こること、
主人公の気持ちとを比べて共通点を探しながら、
主人公に自分自身を重ね合わせていくことだけです。
最終的には、自分とは全く違う人生を送った映画の主人公は、
実は自分自身である、と言い切れるところまで
追い込むことができるかが勝負どころとなります。