日記

配信音楽ではできないこと

音楽業界に携わる身としては、昨今のCD不況は大きな課題として
取り組んでいかなければいけません。

むかしの曲のカバーアルバムが大ヒットしたり、
リバイバル作品ばかり売れるということは、
リスナーが現在の音楽にノーを突きつけて、

「むかしの曲のほうがいいよ。」

と言われているのと同じことですので、
現代の作家たちは今一度襟を正さなくてはいけません。

しかし、CDの売り上げ低下を横目に、
楽曲配信が盛んになっているのもまた事実です。
最近は、音楽を携帯電話(スマートフォン)でしか
聴いたことのない子供たちばかりだそうです。
携帯電話のモノラルスピーカーやダイナミックレンジの狭い
ヘッドホンでしか音楽を味わったことがないなんて
何とも寂しく、もったいない話です。
大人だって、最近はパソコンで聴いておしまいという人が
結構多いのではないでしょうか。
パソコンのスピーカーよりも、ひとむかし前のラジカセのほうが
音質が良く、ゴージャスな音楽体験ができるのですが。

これもすべて楽曲配信の利便性を多くの人が求めた結果ですが、
パッケージ作品(CDやレコード、カセットなど)にあって、
配信にはない魅力をあれこれ考えてみたら、

「好きなアーティストの作品はCDで欲しい。」

というコレクター気質を満足させることの他に、
もっと大きな魅力があったことを思い出しました。

それは、

「大好きな作品を大好きな人と貸し借りできる。」

ということです。

僕自身も経験がありますが、むかしは、
CD(僕の時代はカセット)を友人や恋人と貸し借りするという
喜びがありました。
好きな音楽を物として手渡して共有することができたのです。
そしてその音楽についての感想をやり取りすることで、
人間関係も深まり、中には、その音楽を通して恋人になった、
結婚してしまった、などということさえありました。

好きな人に貸してあげたお気に入りのCDケースの中に、
その子が書いてくれた感想メモの紙切れが入って返ってくる。

友人に貸したCDケースに傷が付いて帰ってきて腹が立つ。
(しかし長い年月が経つとその傷が懐かしい思い出となる。)

そんな素晴らしい体験は、配信音楽ではできないでしょう。

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。