音楽を聴く時に人が意識するのは、主にメロディーラインと、
それを支えるベースライン、そしてそれらをつなぐハーモニーや
速度(テンポ&リズム)ですが、そのような「音楽の輪郭」は、
音楽全体の要素のたった20%ほどです。
残りの80%の要素は、「雰囲気」を創るための
細部の演出であると言うことができるでしょう。
つまり、人間の無意識の部分に語りかける仕掛けです。
音楽を聴いた時に、メロディーやリズムは好きだけれど、
何となく全部は好きになれないとか、何となく暗い、明るい、
何となく心地良い、なぜか分からないけれど心から離れない、
など、「何となく」という経験をするものですが、
この「何となく」を創るために作家は多くの時間を費やします。
はたから見ると、
「どうしてそんな小さなこと、誰も気付かないようなことに
たくさんの時間をかけるのですか?」
と思われるでしょう。
具体的かつ明確であるメロディーラインやハーモニーの創造より
この「雰囲気の創造」というのはとても困難であり、
まるで雲をつかむかのような作業が延々と続くことになります。
作っては壊し、作っては捨て、捨てたもの壊したものをまた戻し
ということを
「これでよし」
と自分が納得するまでやることになります。
「雰囲気」というと、手癖に任せて適当に、と思われがちですが
自分が思い描いた通りに雰囲気を構築するのは至難の業です。