日記

骨折テスト

小学生の時、大きな楽しみが二つありました。
それは、5年生の時の林間学校と、6年生の時の修学旅行です。
両方とも、滅多に体験できない大人数での集団旅行であり、
僕たち小学生の間では胸躍るイベントだったのです。

いよいよ待ちに待った5年生となり、
林間学校も近づいてきたある日のこと、
僕は友人数名と学校で一番高い木に登り、
そこから下に飛び降りるという、
「ジャッキーチェンごっこ」をして、
木の枝がY字に広がった部分に足が引っかかって、
みごと真っ逆さまに頭から地面に落ちて、
肩を骨折してしまいました。
かなりひどい骨折をして長期入院となり、
おかげさまをもちまして林間学校には行けませんでした。

そして今度は6年生になり、
修学旅行が近づいてきたある日のことです。
その頃、僕たちの間では、
「校内鬼ごっこ」というのが流行っていました。
特に、鬼から逃げながら職員室の前を全速力で駆け抜けるスリル
といったら、それはそれは素晴らしいものでした。
しかし、校内の壁や柱というのは、
強固なコンクリートでできていますのでひじょうに危険です。
廊下の曲がり角から突如現れた鬼から身をかわそうとして
身体を左右にひるがえしたら、
その遠心力で右腕が大きく振られ、
コンクリートの柱の角に激突しました。

それまでにもう2回も骨折したことのあった僕(3年生の時にも
一度していたのです)は、電流が駆け抜けるかのような痛みに、
これは骨折であると確信しました。
しかし、次の瞬間に僕の頭をよぎったのは、
行くことができなかった5年生の林間学校のことです。

「修学旅行も行けなくなってしまうのだろうか。」

と恐怖を感じました。
そこで僕は、このことを誰にも喋らず、痛みに耐えて、
そのまま修学旅行に行くことを決断しました。

しかしながら、経験したことのある人はお分かりでしょうが、
骨折の痛みというのはものすごいものです。
そこで僕は何とかして

「これは骨折ではない。」

と思い込む方法はないだろうかと考えました。
心の安らぎを得たかったのです。

そこで考え出した方法は、まず直立して両腕を前に伸ばし、
そのまま重力に身を任せて床に倒れこみ、
腕立て伏せの体制になって耐えることができたら、
僕は骨折はしていない、という自分勝手なルールです。
僕はこれを実行に移すことにしました。

直立して両腕を前に伸ばす段階ですでに右腕に痛みを
感じましたが、そのまま意を決して前に倒れてみました。
大丈夫でした。
腕立て伏せの体制をしっかり維持できたのです。

念には念を入れて3回やってみることにしました。
3回共みんな大丈夫でした。
もちろん、かなりの痛みはありましたが・・・

そして僕は自分で決めたテストをクリアしたため、

「これは骨折ではない。」

と思い込むことに成功して、
無事に修学旅行に行くことができたのです。

激痛に耐えながらの修学旅行だったため、
記念写真の僕の顔はどれも苦痛にゆがんでいます。

修学旅行から帰ってきて一安心してお医者さんに行ったら、
案の定骨折していて、もうくっつき始めていると驚かれました。

このようにかなりの変人ですので、
他の人と同じようにまっとうに生きれるわけはなく、
作曲くらいしかすることができず今に至るというわけです。

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。