毎年お正月になると、妹が家に遊びに来てくれます。
僕より6歳下のかわいい妹です。
お正月は特にすることもありませんから、仕事のことや、これか
らの人生の計画などを延々と話すことになるわけです。
3年ほど前、妹は仕事も人間関係もなかなかうまくいかず、とても
苦しんでいましたがそのお正月も来てくれました。
自分の人生に対して自暴自棄になっているように見えました。
将来のことを話していても、どんなことを訊いても返ってくるの
はネガティブな返事ばかりで、僕はだんだん腹が立ってきて、
「まず根本的なことを聞かせて。幸せになりたい?」
と尋ねたところ、妹は、
「うーん」
と考え込んでしまったのです。
ありとあらゆる未来設計は、幸せになりたいという気持ちを土台
として発展するのですから、幸せになりたいかなりたくないかで
返答に迷うようでは、心の状態が健全ではないことになります。
まずはそちらの回復を目指さなければなりません。
そして、あれから3年経った今年のお正月。
僕はあの時と同じ質問をしてみました。
「幸せになりたい?」
すると妹は、
「うん」
と即答したのです。
たちまち、僕の中に嬉しい気持ちが広がりました。
今が幸せか幸せでないかということよりも、幸せになりたいと
いう気持ちを妹が取り戻してくれたと思ったからです。
妹は続けてこう言いました。
「たしか前も同じことを訊かれたと思うんだけど、
あの時はどうしても、うんと言えなかった」
「それはどうして?」
「自分のような人間が幸せになってもいいのかなと思っていたの」
3年前とはまるで違う様子の妹を見て、僕は一安心しました。
今現在が幸せか不幸せかということは、考え出すとキリがありま
せん。
もっとも大切なのは、
「幸せになりたいという気持ちがあるかどうか」
ということを改めて思い知ったお正月でした。
冬の窓/作曲:山谷 知明