日記

作品の一番最初のファンは誰か

むかし、ある映画を作っている現場で、監督が編集マンの人に
あれこれ言われている光景を見ました。

あるシーンの編集プランが固まり、監督が、

「よし、これでいきましょう」

と言ったところ、編集マンの人が熱を帯びた口調で待ったを入れ、
別の案を提示してきたのです。

監督と編集マンの議論は白熱した雰囲気になってきました。

僕も含め周囲の他のスタッフは、黙ってそれを見守っていました
が、中には、

「これでいいでしょう。もうこれでいきましょうよ」

と言いながら、一刻も早く帰りたがっている人もいました。

監督と編集マンの議論が終わり、ようやくその日は終了となりま
した。

その帰り道、僕が監督に、

「編集の○○さんにいろいろ言われて苦労しましたね」

と言ったら監督が、

「やまちゃん、○○さんに言われて僕は嬉しかったんだよ。

 編集マンを含め映画に携わるスタッフというのはみんな
 そのプロジェクトのために集められた雇われ人だから、
 自分の仕事が終わったらさっさと帰りたいはずなんだ。

 それなのに○○さんは、僕がよしと言った後も、
 アイディアを出してきたね。

 それは、彼がこの映画をもっと良くしたいと思っている証拠で、
 この映画に夢中になっているということなんだ。

 まず作る側が作品に夢中になって、作品のファンにならなけれ
 ば、多くの人に愛される作品にはならないと思うよ」

とおっしゃいました。

その時の監督の言葉が、今でも心に残っています。

今日の音楽

なつかしい日々(Lifeバージョン)/作曲:山谷 知明

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。