作る前に、これから作ろうとするものを頭の中にイメージした上
で作り始めるということが、プロとして数をこなして仕事をして
いるうちに難しくなってきます。
所謂「手ぐせ」というものがあり、制作する上での習慣のような
ものに沿って仕事が円滑に進んでしまうからです。
そのほうが制作者の負担が少ないですし、制作者の特性がすんな
り反映されてお客さんにも喜んでもらえるものができます。
レストランやパン屋さん、お菓子屋さんなどは独自のレシピを
持っていて、その通りに毎日毎日同じ物を作りますから、
「あのお店のあれが食べたい」
とお客さんに思ってもらえるわけです。
提供する側も、いったんレシピが完成してしまえば、その後は
それを元にして、延々と作り続けるだけです。
もちろん日々改良を加えながら仕事をしますが、大幅な変更が
なされることは滅多にありません。
しかし、「制作者」ではなく、「創作者」として命をかけなけれ
ばいけないのは、レシピ作りの部分です。
まだこの世に無いもの、自分が作ったことのないもの、新しい
分野への挑戦など、頭の中に作りたいものをイメージするところ
から始めることは多大な気力を必要とします。
その困難を乗り越えて、新しいものを創ろうとする気持ちが
消えてしまっては、創作ではなく単なる「作業」になってしまう
でしょう。
新しい道(バージョン6)/作曲:山谷 知明