日記

街の本屋さんで買った本が与えてくれる価値

紙の本か電子書籍かという議論は至る所でされていますが、
紙の本のあの「重さ」が重要なキーワードであることは以前も
書きました。

本が与えてくれるものは、本の中に書かれてある情報ではなく、
その本を受け取る人の心構えによって大きく変わってくるのです。

その本の物体としての重さを感じ、紙の手触りを感じ、ページを
めくる音を聞きながら読むから、書かれてある情報以上のものが
心に入り込んで来ます。

また、Amazonで買って自宅に届けてもらうよりも、自分の足で
本屋さんまで歩いて行って買ったほうがより深く心に残ります。

一見すると無意味なように思えることですが、その本をどうやっ
て入手したか、その購入方法が、本から豊かなものを得る手助け
となるのはとても不思議なことです。

つまり、本の内容ではなく、その本をどうやって買ったか、
どうやって読むかが、本から得られる価値を大きく左右します。

これは、本だけではなく映画や音楽にも言えることです。

Amazonプライムビデオという、インターネットで好きな映画を
いつでもどこでも何回でも観られるサービスがありますが、
先日、歌手のイザナギTAROさんが、

「Amazonプライムで映画を観るようになって、
 観る本数はこれまでの人生でもっとも多くなっています。
 今までの人生で、今が一番映画をたくさん観ています。
 でも、タイトルすら思い出せないのです」

とおっしゃっていて、ああ、そういうことなのかと思いました。

あらゆる音楽や映画や本を、観たいと思った時にいつでも観られ
る環境が整っているのに、その作品のタイトルすら思い出せない
ほど、「軽く」しか接することができなくなっているのです。

これでは、観ないほうがまだマシだと言えるのではないかと、
何だかとても悲しくなりました。

映画が映画館に行って観るしかなかった時代。

その時に観た映画は、映画のタイトルや内容はもちろんのこと、
いつ観に行ったか、誰と観に行ったか、映画の後何を食べたか、
一緒に行った人とどんな話をしたか、などということまで
鮮明に覚えています。

作品を鑑賞するということにおいて、どちらが豊かなのかと言え
ば、明らかに昔のほうが作品から大きなものを得られていたと
思います。

今日の音楽

禁じられた踊り/作曲:山谷 知明

作曲家・株式会社サウンドジュエルデザイナーズ 代表取締役/青森県出身・横浜市在住/映画音楽、テレビやCMの音楽、歌、舞台音楽など、幅広い色彩の音楽を、繊細な音楽表現で描いています。主な作品は、映画『校庭に東風吹いて』、『ひまわり 沖縄は忘れない あの日の空を』、『アンダンテ 稲の旋律』、テレビアニメ『アスタロッテのおもちゃ!』など。特技は、集中力が長時間持続すること。好きなものは、美しいもの、映画、本、マカロン、チョコレート、高い所。好きな言葉は、「芸術家は弱者の味方である」。ドストエフスキー、太宰治、寺山修司、芥川龍之介、江戸川乱歩、夢野久作などを愛読しています。