一見すると神秘的に思えるようなことでも、小さくて具体的な
ことが集積することで成立しているものです。
たとえば、作曲に関して言えば、「インスピレーション」という
ことがよく言われ、それはまるで、天から作曲家の頭上に向かっ
て一筋の光が射し、それによって五線紙の上の鉛筆がスラスラと
動く・・・というようなイメージされることが多いと思います。
しかし、実際はそのようなことはなく、作曲家が毎日やっている
のは、小さくて具体的なことばかりです。
鉛筆を削ったり、小節線を書いたり、音楽制作のソフトを立ち上
げてトラックネームを入力したり、これから作ろうとする音楽に
関係した本を読んだり、姿勢良く歩いたり、珈琲を飲んだり、
人と話をしたり、そういうことすべてが作曲という仕事を構成し
ていると言えるでしょう。
そして、そういうものがある程度集積すると、その土壌の中から、
インスピレーションの芽が生まれることがあります。
小さくて具体的なこと。
これをやり続けてさえいれば良いのであり、人間はそれをする
ことしかできないのだと思います。
森のささやき/作曲:山谷 知明